左岸

江國香織の「左岸」を読了した。長かった。年末から読みはじめて、年明けまで掛かった。これは辻仁成の「右岸」と対になる物語だけど、僕としてはこの「左岸」だけで十分だった。
読んでいて、「神様のボート」を思いだした。お母さんと、女の子の生活が描かれている。そのお母さんが子供のころの話から始まっているところも似ている。


どうして、こんなふうに人の成長を書けるのだろう、と思った。子供の頃に感じたことを、大人になって忘れてしまうことはよくある。でも江國さんは「子供の頃」をとても上手に書いている。忘れていたことが、書かれていたりするのでびっくりする。


ここまで書いたことと、あまり関連がないけど、気に入った一文を引用する。

「やるんだけど、心の準備がまだできない」
言い訳ともつかず茉莉がつぶやくと、惣一郎はひっそりと笑った。
「でもね、物事には準備する時間は与えられてないんだ」
それだけ言って、茉莉をそこに残し、一人で土手を滑り降りてしまった。

左岸

そういえば、「落下する夕方」の華子の弟さんは「惣一」だった。たまに、同じような名前が使われている。
すぐには読み返さないけど、数年のうちには読み返すような気がした。たぶん。


左岸
左岸
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