ターニングポイントは35歳

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『遠い太鼓』は、四十歳を迎えた村上春樹が、自らの三十代後半を振り返って書いた自伝的エッセイでもあり、独立の意志を固める時期にちょうど三十代後半にさしかかろうとしていた私には、年齢的にも共感し、影響されるところが大きかった。

「四十歳というのはひとつの大きな転換点であって、それは何かを取り、何かをあとに置いていくことなのだ、と。そして、その精神的な組み換えが終わってしまったあとでは、好むと好まざるとにかかわらず、もうあともどりはできない。(中略)それは前にしか進まない歯車なのだ。僕は漠然とそう感じていた。(中略)だからこそそうなるまえに、――僕の中で精神的な組み換えが行われてしまう前に――、何かひとつ仕事をして残しておきたかった」(同16頁)

「何かひとつ仕事を」というほど明確なものは見えていなかったが、四十歳になって「精神的な組み換えが行われてしまう」前に、いったい自分に何ができるのかを確かめたい、一人になったときに自分の身に何が起こるのかを見てみたいと、私は強く望んだのだった。

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My Life Between Silicon Valley and Japan - 生きるために「読み」「書くこと」で生きる

全文はフォーサイトのシリコンバレーからの手紙で読むことができる。こういう文章が無料で読めるって、いい時代だ。

僕にとってのターニングポイントは、やっぱり35歳だ。
回転木馬のデッドヒートにプールサイドという短編がある。これを読んだのは高校1年生くらいのときだった。あのころは35年の半分も生きていなかった。人生の1/4程度だったのかな。

35歳になった春、彼は自分が既に人生の折り返し地点を曲がってしまったことを確認した。
回転木馬のデッドヒート - プールサイド

プールサイドの主人公は、35歳の誕生日を境に、「こちら側」から「あちら側」に足を踏み入れた。
彼は人生を70年と考えていた。もちろん人生を80年と仮定してもよかったが、彼にとっては70年だったのだ。もしかしたら50年かもしれないけどね。

自分の人生の半分を、自分で決めておく。そしてそれを意識するのは、悪くないと思う。
35歳までに、なにができるかな。