あるキング

伊坂幸太郎の「あるキング」を読了した。背表紙にこんなことが書いてあった。

この作品は、いままでの伊坂幸太郎作品とは違います。意外性や、ハッとする展開はありません。あるの、天才野球選手の不思議なお話。喜劇なのか悲劇なのか、寓話なのか伝記なのか。

あるキング

確かに書いてある通りなんだけど、僕はとても伊坂幸太郎っぽい作品だと思った。
作品にはシェイクスピアマクベスの有名な台詞が何度もでてくる。マクベス、読んだこと無いけど、こんな台詞。

Fair is foul, and foul is fair.
きれいはきたない、きたないはきれい。

伊坂幸太郎の作品では、善悪がよくでてくる。物語によって、善が悪に勝ったり、どちらが正しいのかわからなくなったりするけど、善と悪という二つの対立する軸は多くの作品に出てきていると思う。
そう考えていみると、「Fair is foul. and foul is fair.」はこれまで以上に軸がはっきりしている。しかし物語で、なにが fair なのか、なにが foul なのか、といったことがはっきりするわけではない。


人によって好みが分かれそうだけど、僕はすんなり、楽しく読み終えた。世の中、白黒はっきりすることばかりじゃないし。


あるキング (徳間文庫 い 63-1)
伊坂 幸太郎
徳間書店 (2012-08-03)
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