Web2.0と村上春樹

さて、とりあえず書きたかったことは書き終えたので、あとは好きにしてみよう。今日は金曜日(土曜日)だし、明日はゆっくり眠れる。

いろいろなエントリーをぱらぱらと読んでいて思ったのこと。


国境の南、太陽の西」。

僕らは六〇年代後半から七〇年代前半にかけての、熾烈な学園闘争の時代を生きた世代だった。それは、戦後の一時期に存在した理想主義を呑み込んで貪っていくより高度な、より複雑でより洗練された資本主義の論理に対して唱えられたノオだった。でも今僕がいる世界は既に、より高度な資本主義の論理によって成立している世界だった。結局のところ、僕は知らず知らずのうちにその世界にすっぽりと呑み込まれてしまっていたのだ。まるで誰かが用意してくれた場所で、誰かに用意してもらった生き方をしているみたいだ。
国境の南、太陽の西

ノルウェイの森も。

「そして理想というものを持ち合わせていないんでしょうね?」
「もちろんない。人生にはそんなものは必要ないんだ。必要なのは理想ではなく行動規範だ」
ノルウェイの森

羊をめぐる冒険」も。

「いろんなものが変わっちゃったよ」と相棒が言った。「生活のペースやら考え方がさ。だいいち俺たちが本当にどれだけもうけているのか、俺たち自身にさえわからないんだぜ。税理士が来てわけのわからない書類を作って、なんとか控除だとか減価償却だとか税金対策だとか、そんなことばかりやってるんだ」
「どこでもやってることだよ」
「わかってる。そうしなきゃいけないことだってわかってるし、実際にやってるよ。でも昔の方が楽しかった」
羊をめぐる冒険

「ダンス・ダンス・ダンス」も。

「君は何か書く仕事をしているそうだな」と牧村拓【冒険作家】は言った。
「書くというほどのことじゃないですね」と僕は言った。「穴を埋める為の文章を提供しているだけのことです。何でもいいんです。字が書いてあればいいんです。でも誰かが書かなくてはならない。で、僕が書いているんです。雪かきと同じです。文化的雪かき」
「雪かき」と牧村拓は言った。そしてわきに置いたゴルフ・クラブにちらりと目をやった。
「面白い表現だ」
「それはどうも」と僕は言った。
「文章を書くのって好きか?」
「今やってることの関しては、好きとも嫌いともいえないですね。そういうレベルの仕事じゃないから。でも有効な雪かきの方法というのは確かにありますね。コツとか、ノウハウとか、姿勢とか、力のいれ方とか、そういうのは。そういうのを考えるのは嫌いじゃないです」
「明快な答えだな」と彼は感心したように言った。
「レベルが低いと物事は単純なんです」
ダンス・ダンス・ダンス

ついでに村上春樹風に語るスレジェネレーターも。

完璧なWeb2.0などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。
村上春樹風に語るスレジェネレーター

Web2.0の目的は自己表現にあるのではなく、自己変革にある。
エゴの拡大にではなく、縮小にある。分析にではなく、包括にある。
村上春樹風に語るスレジェネレーター


僕のベースとなっているのは、技術やインターネットではなく、たぶん小説なんだろう。
本は本だし、インターネットはインターネット。それ以上でも、以下でもない。

時間を忘れて夢中でページを貪ったのと、夜な夜ないろいろなblogを読んでしまうのも、僕にとっては一緒なんだろう。


最後に。

「それは物事の暗い面だよ。良いことだって起きているし、良い人だっているさ」
「三つずつ例をあげてくれれば信じてもいいよ」と僕は言った。
 ジェイはしばらく考えて、それから笑った。「でもそれを判断するのはあんたたちの子供の
 世代であって、あんたじゃない。あんたたちの世代は・・・・・・」
「もう終わったんだね?」
「ある意味ではね」とジェイは言った。
「歌は終わった。しかしメロディーはまだ鳴り響いている」
「あんたはいつも上手いことを言うね」
「気障なんだ」と僕は言った。
羊をめぐる冒険

さて、これからがやっぱり楽しみだ。