小さなチーム、大きな仕事

「小さなチーム、大きな仕事」を読了した。 37signals という会社の仕事に関する本。ちいさな会社だし、普通のひとはあまり知らないかもしれないけど、Web系エンジニアであれば聞いたことくらいはあると思う。Ruby on Railsを開発したDHH(David Heinemeier Hansson)が所属している。
残念ながら、僕は 37signals のサービスを使ったことがない。SIerだとさすがに難しい。Railsは最近使って感動していたところ。

最近は新書もビジネス書もほとんど読んでいない。そんななか、この本はとても面白かったので嬉しかった。
この本に書いてあるのはこんなこと。「はじめに」から引用。

ビジネスを立ち上げて、経営して、拡大する(あるいは拡大しない)ことについて、言いたいことがある。
この本は、学術的な理論ではなく、僕たちの経験をベースにしている。ビジネスに関わってきた10年の間に、2度の不況、バブルの崩壊、ビジネスモデルの変化、そして暗く縁起の悪い予測が到来しては去っていくのを経験したが、僕たちは利益をあげる企業であり続けた。
<中略>
彼らは主張する。強力なマーケティングと広告予算なしには大手に太刀打ちできない、競争相手より機能の少ない製品では成功できない、自分流にやり方を作り上げながら成長することは不可能だ、と。しかし、これこそ僕達がやってきたことだ。
彼らはいろいろなことを言うが、僕たちはそれが間違っていることを証明してきた。そしてどうやるかを示すために、この本を書いたのだ。

シリコンバレーで大きくなった会社はたくさんあるし、スタートアップのひとつのゴールはGoogleに買収されることだったりもした。でも37signalsはそれと全く違う、たぶん真逆といっていいような考え方で成長している。そんな37signalsがどうやって成長してきたのか、ということを垣間見ることができる。
全部が全部というわけじゃないけど、日本で起業するうえで参考になることも多いのではないかと感じた。


気に入った文章をちょこちょこと。

そのうえ完璧なタイミングは決して到来しない。いつも若すぎたり、年寄り過ぎたり、忙しかったり、金がなかったり、その他いろいろだったりする。完璧なタイミングのことばかり考えていても、それは絶対にやってこない。

本当にそのとおりだと思う。特定のタイミングに対して減点法的に考えると、完璧なタイミングなんて絶対にない。なにかが足りなかったり、なにかがじゃまだったり。だから加点法的に考えるようにしている。なるべく。環境はあるからとりあえずインストールして試してみるか、来月のほうが忙しくなるんだからいまやってみるか、とか。比較的、前向きに。

芯の部分をみつけるには、「もしこれを手放しても、自分が売るものはまだ残っているか?」と自分に問いかけることだ。ホットドッグ屋台は、ホットドッグがなくてはホットドッグ屋台ではない。玉ねぎや調味料、からしなども取り除くことはできる。<中略>だが、ホットドッグがなければホットドッグ屋台は絶対に成り立たない。

これは最近の悩みどころで、何屋をやっているのかよくわからない。ホットドッグ屋台をやっているとわかっていれば、それは芯がわかっているのだと思う。まったくわからないわけではなく、豚骨ラーメンだっけ?味噌ラーメンだっけ?という感じかもしれないけど。

やめることが最善の方法となりうることを覚えておこう。人はやめることを失敗と関連づけがちだが、時にはそれがまさにいますべきことであることもある。<中略>その時間を取り返すことはできないが、そんな状況ではさらに多くの時間を無駄にすることになる。

くだらない習慣はそこかしこにあるので、ひとつずつやめたいけど、とにかく増やしていくことが正しいと信じている人や、現状を変えたくない人たちが多かったりして大変だったりする。やめるのは悪いことではないんだ、ということをうまく伝えられるようになりたい。

大きな決断をするのは難しいし、変えるのも難しい。そして一度大きな決断をすると、たとえそうでなかったとしても自分は正しい決断をしたと信じ続ける傾向がある。客観的ではなくなってしまうのだ。

やっぱり自分のミスを認めるのは難しいもので、だからこそ心に留めておきたい。


素晴らしい本には、よい書評も多い。


次はこちらも読んでみたい。Webで無料で読める。この「Getting Real」を翻訳した方が、この本の翻訳も担当されている。

ところでハヤカワ新書ってあまり見かけないけど、Webに関わる面白そうなものがいろいろある。やっぱり翻訳のものが多い感じ。もうちょっといろいろ読んでみたい。


小さなチーム、大きな仕事―37シグナルズ成功の法則 (ハヤカワ新書juice)
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