泳ぐのに、安全でも適切でもありません

江國香織の「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」を読了した。江國さんの作品のタイトルは、とても素晴らしい。「思いわずらうことなく愉しく生きよ」とか「号泣する準備はできていた」とか「抱擁、あるいはライスには塩を」とか。そしてあとがきも素晴らしい。もちろん中身も。


ここには10編の短編が収められている。短編なのであまり長くはないけど、一編、一編に読み応えがある。ぎゅっとつまっている感じがする。それぞれが1冊の小説にもなりうるくらいの密度を感じる。でも短くまとまっていて、それでいて面白い、すごい。
何度読んでも、不思議だけど、文体の特徴を捉えられない。これは僕の読解力の問題かもしれないけど。一部分を引用しても、まったく良さが伝わらない。伝えられるような引用ができない。でも全体を通して読むと、江國香織にしか描けない世界がある。
この小説の一編を読むだけで、それを堪能できると思う。