乳と卵

川上未映子の「乳と卵」を読了した。
芥川賞受賞作ということで、気になって読んでみた。


まず、はじめのほうの一文を引用してみる。

巻子らは大阪からやってくるから、到着の時間さえわかっていれば出会えぬわけはないし、ホームはこの場合ならひとつやし、わたしは前もってきいておいた到着時間を携帯電話に入力して、通話ボタンを一回押してきおくさせていたのでその点は安心、歩きながら無数にある円柱にぴったりと巻かれたつるつるの広告を何個も何個も横切って、しかし広告に使われている老女優の着物の柄が、鏡餅なのかうさぎなのかがこれではわからないな、電光掲示板を確認してから階段を、気がついたら数えてて、登っていって、新幹線が色々を吐く大きな音によろけるくらいに圧されながらも、すぐに巻子らを見つけることができた。

乳と卵

こういった文体で物語が進んでいく。最初はちょっと驚いて、読みにくいな、と思いながら読み進めていたのだが、ふと気付くと普通に読み進めていた。
それでもやっぱり文体に対する抵抗がどこかにあるようで、読み終わってみても何を読んでいたのかよくわからなかった。うまく文章を消化できなかった。
帯には「言葉が目の前で存在に追いつく奇跡」とあったが、僕の場合は言葉だけが流れていってしまい、意識が追いつけなかった。
それでもけっこう面白く読めたと思う。たぶん。
他の作品も読んでみたいと思う。

参考


乳と卵(らん) (文春文庫)
川上 未映子
文藝春秋 (2010-09-03)
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