抱擁、あるいはライスに塩を

江國香織の「抱擁、あるいはライスに塩を」を読了した。
帯にはこんな文句が書いてあった。

三世代、百年にわたる「風変わりな家族」の秘密とは――

どのような家族も異形であり、普通の家族というものは存在しないとしても、それでもやっぱりかなり風変わりな家族の物語だった。もちろん面白い物語だった。


江國さんの作品では、いろいろなところでちょっと変わった「家族」が書かれている。
母親だったり、父親だったり、兄弟だったり、姉妹だったり、叔父や叔母、従兄弟や従姉妹がでてくる。
いろいろあるけど、特に「家族」で印象的なのは「流しのしたの骨」と「神様のボート」だ。
どちらにも家族のなかだけで通じる言い回しやエピソードがたくさんある。そういったディティールから、自分の家族を思い出す。


この作品はかなり長く、登場人物が多い。それぞれが魅力的なエピソードを語り、いろいろなひとたちがちょっと入り組んだ恋をしている。
「抱擁、あるいはライスには塩を」を読み終わったとき、これは静かな狂気の物語だと思った。
そんな文章、表現がどこかにあったと思い、考えてみると、「小さな、しずかな物語ですが、これは狂気の物語です。そしていままでに私の書いたもののうち、いちばん危険な小説だと思っています。」という「神様のボート」の後書きだった。


人生にはいろいろな危険があって、安全でも適切でもないところを進まざるを得ないことがある。
それでもこんな家族に囲まれていれば、こころ強いだろうな、と思った。


抱擁、あるいはライスには塩を
江國 香織
集英社
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