「カラマーゾフの兄弟」はシンプルに面白かった
読み終わるまでに、2週間くらい掛かった。
「カラマーゾフの兄弟」の書評はいろいろなところで書かれている。
どれもこれも、難しそうなことが書いてある。
東大教官が新入生に勧めるなんて聞いてしまうと、読むのに気後れしてしまう。
例えばWikipediaには以下のような記述がある。
複雑な構成を持つ長大な作品で、信仰や死、国家と教会、貧困、父子・兄弟関係などさまざまなテーマを含む深遠な思想小説である。イワンがアリョーシャに語る「大審問官」は特に有名。
カラマーゾフの兄弟 - Wikipedia
恐ろしく難解な印象を受ける説明文だ。
確かにこの本を読み通すためには、ある種の忍耐強さが必要だった。
これまでに読んだ本のなかで、いちばん大変だった。
理由はいろいろある。
キリスト教に関する素養がほとんどなかった。
登場人物が多く、馴染みのない名前がおおく、さらに呼称がたくさんある。
カラマーゾフ家の名前は以下の通り。
続柄 | 名前 | 呼称 |
---|---|---|
父親 | フョードル・パーヴロウィチ・カラマーゾフ | ? |
長男 | ドミートリィ・フョードロウィチ・カラマーゾフ | ミーチャ |
次男 | イワン・フョードロウィチ・カラマーゾフ | ワーニャ |
三男 | アレクセイ・フョードロウィチ・カラマーゾフ | アリョーシャ |
ロシアの名前は 名 / 父称 / 姓 という構成らしい。
さらに呼称はまだいくつかある。これらが様々な組み合わせで記載されていた。
最初はだれがだれだかさっぱりわからなかった。
読んだのは新潮社の原卓也訳。
亀山郁夫訳はこのあたりが統一され、文言も現代語っぽくなっているらしい。
誤訳が多いという書評もあるが、そのうち読んでみたい。
「カラマーゾフの兄弟」はシンプルに面白かった。
ではどこに面白いと感じたのか。
やはり物語の本筋となる、「父親殺し」だった。
この部分はとても上質なミステリと言っていいと思う。
いったい誰が犯人なのか、だれが嘘をついているのか、とても気になってずんずん読み進めた。
登場人物たちについて、思考や状況が詳細に記載されている。
これが退屈なときもあるのだが、話が進むにつれ、その人物たちの様々な一面を知ることができる。
愛したり、悩んだり、困ったり、怒ったり、読み進めていくと、それぞれの人物たちについて様々な発見がある。
文中に「カラマーゾフ的」という表現がある。
カラマーゾフ的な要素はだれもが持ってるが、カラマーゾフたちはその振れ幅が大きい。そこに揺さぶられる。
大審問官やキリスト教については、あまり理解できなかった。
背景知識が足りず、うまく状況を想像できなかった。
3回くらい同じ部分を読んだが、さっぱりわからない部分もあった。
これについては、また読み返してみたいと思う。
残念ながらこの本を初読で理解しきれるような読解力は持ち合わせていない。
僕はいまドミートリィと同い歳だ。
高校生や大学生のときでは、この本を読み通せなかったと思う。
なかなかよい時期に出会った。