もしもし下北沢

よしもとばななの「もしもし下北沢」を読了した。そんなに期待していなかったんだけど、面白かったし、心に響くものがあって、とてもよかった。
最近のよしもとばななの作品は、なんだか心に刺さる。ちょっと前に読んだ、「サウスポイント」もそうだった。

僕が変わったのか、よしもとばななが変わったのか、あるいはその両方かもしれないけど。ただ、最近の作品は、初期の頃の作品に雰囲気が近い気がする。


この作品を読んでいると、キッチンを思い出した。キッチンを、もっと押し進めた感じ。
「キッチン」では、肉親が死んで、引越して、料理してる。
「もしもし下北沢」では、肉親が死んで、引越して、料理して、男の子と寝て、父の友人と寝てたりする。もちろん、全然嫌な感じの文章じゃない。少なくとも僕にとっては。


上の文章と全く関係ないけど、気に入った一節はこれ。

なんだ、ほんとうはお母さんにどうしても来てほしかったんだ、とわかった。
二十歳を過ぎたら、なんでもひとりでできるようになっていると思っていたが大間違いで、私はまだまだこれからの人間なのだと思い知った。しかしその敗北感は妙に心地いいものだった。気張っていたものがするっと抜けて、ぐにゃぐにゃになり、また一歩からはじめるしかない、地べたから高みを見上げる気分だった。

そういうことあるよね、と思って。


もしもし下北沢 (幻冬舎文庫)
よしもと ばなな
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