おおかみこどもの雨と雪

おおかみこどもの雨と雪」を観てきた。

YouTubeに予告編があって、これはいちばん気に入っているやつ。2番目はこれ公式サイト でいろいろリンクされている。
映画館に行くのは本当に久しぶりのことだった。昔は映画館をはしごしたり、ビデオやDVDを借りて夜な夜な観ていたりしたけど、社会人になってからはほとんど観なくなっていた。
ちょうどよく、平日の昼間にぽっかりと空いた時間があったので、映画を観たいなと思っていた。そうしたら「おおかみこどもの雨と雪」が面白そう、観たい、という声が聞こえてきたので観てきた。あとこちらの評を読んで、観てみたいと思った。


おおかみこどもの雨と雪」、1800円に値する映画だった。もう1回、観たいくらい。
上映時間の半分くらいはうるうるして、4、5回はぐっときた。ぽろぽろ泣いたりはしないけど、歳をとるごとに涙もろくなっていく気がする。もう10年経ったら、ぽろぽろ泣いているかもしれない。あと1人で観に行ったのがよかった。隣に人がいると、つい気になってしまう。


細かいディティールやリアリティについては、ちょっと気になることもあったけど、リアリズムを求めているわけではないから、そんなに気にしない。映像は美しく、物語に引き込まれた。
でも気に入ったディティールを、ちょっとだけ書きたい。
大学生のころの本棚にはロング・グッドバイやヘッセの詩集や教科書があった。子供ができてからは、出産や育児の本があった。引越してからは、子育てや農業の本があった。雨の学習机には、森は生きているもあった。人の本棚が気になっちゃうので、こういうシーンは楽しかった。


いったい何に感動したのだろう、なぜぐっときたのだろう、と観終わってから考えてみた。観ているあいだはそんなこと考えもしなかったけど。

忘れてしまいがちだけど、大人も昔は子供だった。そして子供はみんな秘密を持っている。子供は秘密を抱えこみながら、好むと好まざるとにかかわらず成長し、必死に考えて悩みながらも、何かを選びとっていかなくてはならない。
それは"おおかみこども"ではなく、"にんげんこども"でも同じことだと思う。もちろん"おおかみこども"であることで、"にんげんこども"とは違った秘密や悩みを抱えることになるけど、人間であっても人それぞれ秘密や悩みは大きく異なる。

おおかみこどもというメタファーを通して、自分が子供のころに抱えていた秘密や悩みや成長の過程を、ちょっとだけ思い出していたのかもしれない。
他の人はどんなふうに感じていたんだろう。わからないけど、ちょっと気になる。


2人の"おおかみこども"と、お母さんの"にんげんおんな"、たまにお父さんの"おおかみおとこ"。特別な家族だけど、普通の家族のように感じる。そんなふうに描かれている、それがすごい。


観終わって余韻にひたりながら本屋にはいったら、小説版が売っていて、ついつい買ってしまった。映画にはでてこなかったことが、ちょこちょこ書いてあって面白い。
例えばおおかみおとこに出会ったとき花は19歳だったとか、花のちょっとした生い立ちとか、その先でもいろいろと。映画が気に入ったら、小説も読んでみるといいと思う。


いい時間を過ごした。むねいっぱい、心に響いた、心が震えた。


<追記:2012/07/30>
僕もちょっと書いたけど、本棚がいろいろ盛り上がってる。まとめてくださっている人たちがいて、いろいろ楽しい。読んでみたい。

ロング・グッドバイ」を読んだときのエントリはこれ。

主人公マーロウは、こんな素敵なセリフを残している。

「しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている資格がない」(プレイバック)
「さよならをいうのは、少し死ぬことだ」(長いお別れ/ロング・グッドバイ)
ギムレットには早すぎる」(長いお別れ/ロング・グッドバイ)

フィリップ・マーロウ - Wikipedia

<追記:2012/08/06>
おおかみこどもの話をしていて、感動した場面がちょっとずつ違って面白かった。花の出産だったり、雨が大人になっていくきっかけだったり、雪がいろいろ告げるところだったり。
感想に書いたけど、やっぱり「おおかみこども」というメタファーを通して、みんな違う見方をしているんだな、と思った。