クローバー
島本理生([twitter:@shimamotorio])の「クローバー」を読了した。
ちょっとベタだなと思えてしまうようなところもあったけど、最後までどきどきしながら読んだ。
双子の姉弟の恋を中心に物語は進んでいくけど、これは二人(あるいは彼らの周りにいるひとたちを含めた)の成長の物語だと感じた。
高校生の恋は高校生にしかできないし、大学生の恋は大学生にしかできないし、もしそこで何か変化したとしたら、それもそのときにしかできないことだと思う。島本さんはそういった限定された環境における成長を、いつもとてもうまく描く。
アンダスタンド・メイビーを読んだあとだったので、どんでん返しがなく物語が終わることを祈った。すると比較的ハッピーエンドだったので、読み終わってちょっとほっとした。
おまけ。
ほら、女性ってバニラのアイスクリームが食べたいって言った翌日にそれを買ってくると、平気で『昨日は気が向いただけで、私はもともとバニラアイスなんて嫌いなんだ』って怒るようなところがあるじゃないですか。
クローバー P.59
これを読んで、「ノルウェイの森」の緑の苺のショート・ケーキを思い出した。
たとえば今私があなたに向かって苺のショート・ケーキが食べたいって言うわね、するとあなたは何もかも放りだして走ってそれを買いに行くのよ。そしてはあはあ言いながら帰ってきて『はいミドリ、苺のショート・ケーキだよ』ってさしだすでしょ、すると私は『ふん、こんなのもう食べたくなくなっちゃったわよ』って言ってそれを窓からぽいと放り投げるの。
ノルウェイの森
世の女性達が皆このようなことを言うわけではないと信じたい。
けど、物語の終わりの方でこんな一節があった。
「子供のころ、家のすぐそばにドーナッツ屋のチェーン店があって、父親もその店だけはなぜか好きで、一緒によく行ったの。そのときにしょっちゅう食べてたドーナッツが、最近ほとんどの店で置かれなくなったの」
クローバー P.263
僕は額に手を当ててしばらく考え込んだが、それでも彼女の言わんとしていることの意味は理解できなかった。
「だから、そのドーナッツを探して十個買ってきてくれたら許す」
分かったよ、と僕は答えた。
このあとモンブランを、チーズケーキを買いに行かされるのか、と思ったけどそんなことはなく、島本さんらしい展開だった。そちらは是非本書のなかで確認を。