月野さんのギター


寒竹泉美 ( id:pasoco / [twitter:@kanchiku] ) の「月野さんのギター」を読了した。


だいぶ前に、作家さんのblogってどれくらいあるものだろうと思い、いろいろ検索してみた。そのなかで寒竹泉美さんのblogを見つけて、プロフィールを読んで興味をひかれた。

寒竹 泉美(かんちく いずみ)
1979年生。小説家。医学博士。京都在住。
九州大学理学部卒業後、
京都大学大学院医学研究科に入学。
博士課程修了。
2009年に講談社Birthから作家デビュー。
刊行作品「月野さんのギター」(講談社

寒竹泉美プロフィール

京大博士の作家さんてどれくらいいるんだろう。しかも理系で。
歳が近いし、理系だし、カメラ好きみたいだし、twitterやっているし、blogがはてなだし、興味をひかれた。


本を読んでみようと思っていたのだが、近くの書店で見つからなかった。amazonで買えばよかったのだけど、なんとなく実物を手にとって買いたいと思った。いつも小説は書店で手にとって買いたいと思っている。技術系の本はamazonでもいいんだけど。これについては長くなるので割愛。


先週大阪に行く用事があり、かつ、ブックファースト梅田店で寒竹泉美さんの「私小説*1という展示をやっていた(ちょうど昨日までだった)ので観に行った。そこで「月野さんのギター」を手に入れて、大阪からの帰りの新幹線で読んだ。
そんなわけでblogを見つけてから本を読むまでにかなりの時間がかかった。


読んでみると面白かった。あらすじとかは、このへんから。
多少流れに違和感を感じることもあったけど物語自体が面白く、この文章好きだな、と思うところがいくつもあった。


違和感を感じた部分は、「同時に恋をできるのか」ということについて書いてある部分だった。ここになにかこだわりがあって、力が入っているのかな、という気がした。
具体的には説明的に過ぎる感じがした。あとで気がついたのだが、そもそもこの作品の原題は「同時進行の恋」だった(講談社Birth:第7回募集 『同時進行の恋』寒竹泉美)。なるほど。
あとは月野さんの容姿と、真の読んできた本についての描写が少なかったことがちょっと残念だった。「噂になるほどの容姿」とはどのような容姿なのか、「テレビもパソコンも雑誌も新聞もない」部屋でどんなフィクション小説を読んでいたのだろう、と思った。


いいなと思った部分は、最初の方のナナミとのセックスシーンと、月野さんに告白する手前の部分と、ガルシア・マルケスの「わが悲しき娼婦たちの想い出」(ガルシア・マルケスは未読なので読んでみたい)を思い出すシーンと、最後の12章あたり。特にラストの2ページくらいが好き。
想像力を喚起する程度に細かい描写があって、でも説明的ではなく流れるように読める部分が個人的に好きなんだと思う。


「プローブ」という連載が始まっているので、こちらも読んでいきたい。
# フォントサイズがもう少し大きくなって、文字色がもう少しはっきりすると嬉しい。


月野さんのギター (講談社Birth)
寒竹 泉美
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# 正直なところ、ちょっと買うのに勇気がいる表紙だった ;-)

*1:2011/01/18追記 展示内容がWebで公開された http://sakkanotamago.com/story18/0.html