放課後の音符

山田詠美の「放課後の音符(キイノート)」を読了した。けっこう久しぶりに読み返した。

高校生くらいって年齢的には大人と子供の間で、だからといって中間ではなく、ある部分は完璧に大人で、ある部分はまだまだ子供だったりする。そういった雰囲気が、とてもよく描かれている。どの話もちょっとしたほろ苦さがあって、その苦味がこの小説の面白さなんだと思う。

もちろん古臭い部分はあるけど、そもそも僕が高校生だったのももう15年前なので、もはやそんなに気にならない。いまの高校生は、この本を読んでどう感じるんだろう。残念ながらそんなことを気軽に聞ける高校生の友達がいないのでわからない。
やっぱり思い出してみても、女の子のほうが大人だったと思う。当時はそんなこと認めたくなかったと思うけど、あらためて思い出すとね。


文庫本を読んでいるけど、本編、あとがき、文庫版あとがき、解説、すべて読む価値がある、面白い。こういうことはそんなにない。
特にすきなところをちょっとだけ引用する。Jay-Walkの最後のほう。これだけじゃ伝わらないと思うけど、どうせ引用じゃ大して伝わらないので、ほんの一部だけ。

「二人とも、やめなさいよ。上等っていうのはね、ハイヒールを履いても痛くならない足を持つことを言うのよ。それとね、足を傷めないハイヒールを買えるってことよ」

あとがきの「放課後が大好きな女の子たちへ」からはちょっと長めに。

良い大人と悪い大人を、きちんと区別出来る目を養ってください。良い大人とは、言うまでもなく人生のいつくしみ方を知っている人たちです。悪い大人は、時間、お金、感情、すべてにおいて、けちな人々のことです。若いということは、はっきり言って無駄なことの連続です。けれど、その無駄使いをしないと良い大人にはならないのです。死にたいくらいの悲しい出来事も、後になってみれば、素晴らしき無駄使いの思い出として、心に常備されるのです。

たくさんの無駄は、いま、なにかしらに役立っていると信じたい。良い大人になれたとはあまり思えないけど。


放課後の音符(キイノート) (新潮文庫)
山田 詠美
新潮社
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